第１章ではいろいろな音が出てきましたが、工業製品の音には信号音や警報音のように使用者に何かを伝えることが目的である音と、機械の使用に伴って副作用として出る音があります。
後者の副作用音は積極的には何かを知らせることはしません。しかし、カメラのシャッター音や自動車のドアの閉まり音などは、第１章でも述べたように情報としての価値を持っていて、使用者に作動状態を知らせる効果があります。
また、騒音の代表のように思われているオートバイのエンジン音でさえも、運転者には重要な情報です。以前、私はテストコースを走行するときに、ヘルメットの中でイヤホンを装着して音楽を大きな音量で流し、エンジン音を全く聞こえない状態にしてみたことがあります。そうするとエンジンの回転数が分かりにくくなり、変速のタイミングが掴めないため、大変運転しづらくなることを体験しました。
このように副作用音でも何かを知らせる効果は持っていますが、それと比べて前者の信号音や警報音はもっと積極的に何かを知らせようとする音ですから、はるかに重要です。そこで、この章では前者の信号音や警報音について述べたいと思います。
